2010年10月16日土曜日

世紀の空売り(3) トリプルBをトリプルAに


今回の金融危機の本質はサブプライム・ローンだ。見せかけの低い釣り(ティーザー)金利が二,三年続いたあとで、”普通の”変動金利に跳ね上がるというローンの構造。ゴールドマン・サックスがひねり出した魔術=アメリカ下位中流層の人々にとって事実上の信用洗浄(ロンダリング)サービスであるCDO。それにトリプルAの格付けを与えた無責任な格付け機関。ゴールドマンに食い物にされCDSを引き受けたAIG。

『世紀の空売り』の第三章~五章には「The Greatest Trade Ever」にも出てきた抜群に変なやつ、グレッグ・リップマン(Greg Lippmann)が出てきて笑わせてくれるが、それよりも大事なのは、今回の金融危機を理解するうえで大切ないくつかのことが分かりやすく書かれていることだ。

ただし、176ページの「ブラック・ショールズのオプション価格設定モデルが、どうもおかしな仮定にもとづいていることに気づいた。例えば、将来の株価が通常のベル型分布になるという仮定だ」という記述は明らかな初歩的間違い。ブラック・ショールズ・モデルは「株価のリターン」が正規分布になると仮定しているので、「株価」は対数正規分布になり、ベル型分布にはならない。

邦銀でも、ある銀行はサブプライム関連商品で痛い目にあい、ある銀行はほとんど無傷だった。無傷だった銀行は、ちゃんと中身を分析して買わないと決断した、とそこの銀行の人から直接聞いたことがある。ちゃんとやるべきことをやっていれば投資で大やられすることはない。やるべきことをやらないまま投資するひとが多すぎる。

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