2010年10月31日日曜日

世界国債暴落 世界を蝕む日本化現象

高田創さんは信頼している人のひとり。現在、みずほ証券金融市場調査部長チーフストラテジスト。

 「世界国債暴落」というややセンセーショナルなタイトルだが、中身は真面目で丁寧な世界国債の現状分析になっている。ギリシアの実質デフォルトや世界的に財政赤字が拡大している環境のなかで、日本や世界の国債市場をどうみればよいかが書かれており、非常にタイムリーな出版だと思う。
 個人的には第7章の「ソブリン格付けは信じられるのか」がおもしろかった。ムーディーズの「ソブリン格付け」の考え方が分かりやすく整理してある。簡単に言うと、 ①利払い能力、 ②借り換え能力、③財政均衡能力。それを踏まえて「バランスシート調整下のソブリン格付けの考え方」が述べられている。
 2002年5月にムーディーズは日本国債をA格まで引き下げた。その7年後に一転して日本国債の格付け引き上げを発表している。背景に、 ①ムーディーズの理論体系の転換、 ②日本国債の特殊性を加味した判断、 ③世界の日本化、を指摘している。
「国債はそんなに簡単に暴落しないと考えるのが」筆者達の結論的な認識である。
現在の投資環境はグローバルにつながっており、債券市場の影響が株式市場などにも直結することから、債券投資家に限らずあらゆる投資家必読の書ではないかと思う。
 なお、最初のページの脚注でわざわざK氏について触れているのは、上品な著者らの皮肉に聞こえる。

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