2010年10月14日木曜日

世紀の空売り(2) マイケル・バーリ

Michael Burryは面と向かって人と話すのが苦手。2歳のときに癌で左目を失って義眼に。集団にうまく溶け込めない。二十代後半までには、友達のできないタイプの人間だという自覚を得る。長続きする対人関係を一度も築けなかった。「友達が要らないたちなんでしょう。自分の頭の中で、楽しく暮らしていけるんです」
頑固なこだわり。とりつかれるか、まったく興味を持たないか、そのどちらか。
投資とは、自分ひとりの力で、自分にしかできないやりかたで、学ぶべきものなのだ。
バーリはベンジャミン・グレアム、ウォーレン・バフェットのような”バリュー投資家”だ。レバレッジや空売りは使わない。年間100ドルの10Kウィザードを使って、部屋にこもって財務諸表を読むだけだ(10Kというのはアメリカの業績報告書の書式)。それでいて圧倒的なパフォーマンスをサイオン・キャピタルで残している。おそらく、バフェットよりも運用はうまい。創業1年目の2001年、S&P500は11.88%のマイナス、サイオンは55%上昇。翌年、S&P500は22.1%のマイナス、サイオンは16%上昇。2003年はS&P500が28.69%の上昇、サイオンは50%上昇。
生身の人間に話しかけるとき、何が相手の気分を損ねてしまうのかが、バーリにはまったくつかめなかった。
バーリが買う株は十倍に跳ね上がるけれど、その前にまず半分に下がる。
自分の務めは、世の趨勢に異を唱えることだ、とバーリは思っている。
やがてバーリはアメリカの住宅用不動産の価格が下がることを確信し、CDSを買いまくる。バーリはGregory Zuckermanの『The Greatest Trade Ever』にも出てきて、This will be my Soros tradeと考えた、と描写されている。
長いあいだ周囲の世界からほぼ完全に孤立して生きてきたことの、思わぬ副次的効用のひとつだった。自分が正しくて世界が間違っていることを、バーリはたやすく信じることができた。
私はマイケル・バーリほどの才能を持っていないが、気質としては似たものを感じる。

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