2010年10月10日日曜日

世紀の空売り(1) スティーヴ・アイズマン


『ザ・クオンツ』もそうだが、アメリカの金融業界は魅力的なキャラクターの宝庫だ。『世紀の空売り』の最初に出てくるアイズマンもかなりのもの。一言で言うと「人の機嫌を損ねる才能に恵まれている」(笑)。
あるブローカーが催した昼食会に呼ばれたアイズマンは、数十人の投資家たちを前に、いかにこのブローカーの経営者氏が自社の事業を把握できていないかをとうとうとまくしたてて、そのあと中座して、二度と席に戻らなかった(「トイレに行きたくなってね。戻らなかった理由は、自分でも分からないよ」とは本人の弁)。
日本のある大手不動産会社社長は、あらかじめ自社の財務諸表をアイズマンに送ってから、通訳を連れて、投資の依頼にやってきた。アイズマンは財務諸表に重要な項目が明示されていないことに気づいていた。しかし、それをただ指摘するかわりに、犬の糞でもつまむみたいに、財務諸表を持ち上げた。「これは・・・・・・トイレット・ペーパーですね」と言うと、通訳に「訳してください」
アイズマンの妻は「基準のゆるいウォール街でさえ、無礼で、はた迷惑で、攻撃的な人間だと思われています」と言う。「礼儀作法に関心がないんです。ほんとうに、何度も、何度も、何度も、改めさせようとしたんですけれど・・・・・・」
「駆け引きとして、無礼にふるまっているわけじゃないんですよ。表裏がないから無礼になってしまうんです。みんなに変人と思われていることは知っていますけど、本人はそんなふうには思っていません。自分の頭の中で暮らしている人ですから」

私もよく、変人と言われるが、アイズマンと比べるとかわいいものだ。

アイズマンの部下のダニエルは会計士時代にソロモンなどウォール街の大手投資銀行の監査をしているが、ソロモンの上司たちは、部下のトレーダーが何しているのか何も分かっていなかったと言っている。

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